毎回、絵画で見せる子ども達の集中力は、私達講師が圧倒される程の緊張感です。今回も、子ども達の絵から、一生、忘れられないような感動を与えられました。
2年生のS君は、教室に入って来た途端、「今日、絵なんや!俺な、めっちゃ上手く描けるで。方法あみだしてん。」と意気揚々とした顔でイーゼルの前に立ちました。その宣言どおり、彼は、自分でも納得の素晴らしい絵を描きました。当然、そんな方法をあみだした訳ではありません(^^)。ただ、とても集中して描いていました。後でその様子をお母さんに伝えると、彼はアトリエでの絵画に苦手意識があり、初めてアトリエで絵を描いた日は、家に帰って号泣したそうです。負けず嫌いで気も強い子なので、自分のそんな気持ちを悟られたくなく、先にそう言うことを言って、自分の気持ちを励ましていたのかなあと思うと胸が熱くなりました。でも、私の友人にその話をすると、「そうかもしれないけど、その子は、アトリエに入った瞬間、ここの空気や先生達の顔を見て、本当にそんな気持ちになったかもしれないよ。」と言われるとそんな気もします。彼が本当は、どんな気持ちだったのかは、誰にもわかりません。確かなのは、彼がこの一時間半、集中して画面に向かっていたということです。

また、3年生のR君は、絵と図工と算数は、キライ、でもアトリエは、大好きなアトリエ暦5年の男の子です。そんな彼が、今回の絵画では、私も“あれっ?”と思うようなデッサンをしていました。本人も「なんか、描けてん。なんか描けてもてん。」と自分で自分のデッサンにびっくり。そこからの彼は、無我夢中。当然、素晴らしい絵を描きあげました。お母さんも、アトリエで絵を描いた後に、あんなに晴れ晴れした表情は、初めて見たと、おっしゃっていました。
もう1人、今、反抗期真只中の4年生のJちゃんも、今までにないくらいの集中力とエネルギーを見せ、アトリエに通い始めて8年、これまでの彼女とは、同じ人間が描いたとは、思えないくらいの迫力のある絵を描きました。でも、アトリエに来る前は、“今日は、行かない”とお母さんを困らせていたそうです。私の体験からですが、反抗期の時期にある子どもは、いい作品をつくるなあ、作品が変わるなあと思うことがあります。きっと、主観から客観に認識が変わり、本人もどうにもならないものに対する不安や、この年齢なりに感じる大人や社会の理不尽や矛盾であったり、色んなイライラや憤りが、集中した時に全てを忘れさせてくれる瞬間があるのかもしれない、その瞬間、爆発しそうな負のエネルギーが、正に変わり作品を変えさせることが有るのかも知れないと感じます。ただ、言えることは、集中すれば、無我夢中になれば、どんな子もいい絵を描くし、いい作品をつくるという事です。それは、大人の仕事もそうですよね。
和久先生はよくエジソンの話で「天才とは99%の努力とたった1%の天分である。」と言っていましたが、この頃それは違うのではないかと、新聞などの取材で話しています。「99%の努力なんて出来る人はいませんよ。何がそうさせたか。努力じゃなく好きだったからですよ。面白かったんですよ。だから才能が花開いた。」そう言っています。きっと、ピカソもアインシュタインもそうだったのかもしれないなあと感じます。
子どもには、色んな時期があり、彼らは、常に変化しています。一瞬だってとどまってはいません。一部分を見ただけでは、その子がどんな子かわからないように、今がそうだからと言って、これからも同じということは、ありません。今回の絵画のように劇的に変わることだってあります。それだけにいいことも悪いことも、子どもの性格や得手不得手を大人が勝手に決め付けてはいけないなあとよく思います。
だからこそ、私達、子どもと共に生きる者は、子どもの姿に一喜一憂し、泣いたり笑ったり、感情、感動に揺さぶられても、教育の指針となる物は、決してぶれてはいけないと思いました。
先日、行ったお母さんの積木講座でも、大人もそれぞれで、理論ありき派、まずは行動派、様子を見る保守派のグループに自然とわかれ、つくるものや、遊び方があきらかに違い、とってもおもしろかったです(^.^)。理論はだからと言って冒険しないかというとそうでもなく、行動派だからと言って理論を理解していないわけでなく、保守派と言って協調性があるかと言えばマイペースだったり、子ども達を見るときと同じようにお母さん達を見ていると、潜在的なものはあるんだけど、その人間の持つ思考の宇宙は、測り知れないと思いました。でも皆さん第一子とやはり似ていますよね。
次回、違う講座をまた違うグループですれば、また違ったお母さん達の姿に出会えると思うと、とても楽しみです。お母さんの講座は、童具やアトリエ活動への深い理解を得ることだけでなく、実際に活動してみることで、子ども達がどんな思いで活動しているのかもわかるようになります。定員があり参加が困難なクラスもありますが、お時間の取れる方は、できる限り、ご参加下さい。
2012.6.(1) アトリエ講師 星野 由香