独楽の魅力は、回転させることによって瞬時に事態を変化させられることにあります。“形態をまわす”それだけのことで想像もしなかったような現象が生まれ、子ども達は驚きと感動に胸をおどらせていました。とりわけ、息を吹きかけてまわす吹き独楽や、途中で上下がひっくり返る逆さ独楽や黒と白しかないのに発色するベンハムの独楽など。科学を利用したものは、5歳以上の子ども達がとても興味を持っていました。はじめは驚きと感動、そしてなぜ?どうして?という不思議、それから興味が湧き自分で考えはじめる。そういう体験が子ども達に科学する心を芽生えさせます。
アトリエの卒業生で算数や理科が得意だった子は、例外なく独楽や折紙でよく遊んでいました。折り紙は、正方形と直角二等辺三角形のくり返し、また1/3、1/2などの分割、角度平面から立体への変化など、数学的な要素がたくさんつまっています。

日本の伝統的な遊びや、ボール遊びや積木など時代を越えて受け継がれてきている普遍性のあるものは、自然と子ども達の科学する心、モノづくりの喜びが生み出されるようになっているのだとつくづく感じさせられました。
今、算数教室や実験教室に行く子は増えましたが、1・2年生でも鶴の折れない子はたくさんいます。私の時代には考えられなかったことでした。一度教えてもらえればできることですから、能力的な問題ではなく、幼児期の教育環境において、人との関わりの中でそのきっかけが一度もなかったということに驚かされます。
先週の活動では、球を発泡スチロールカッターで自分で4つに切断して、少しずらして接合し、球体のコマをつくりました。球の断面を切って見るという体験はそうあることではないので、それだけで子ども達は大喜び。全部の側面を塗るのは、想像以上に大変でしたが出来上がりがイメージできたのか、集中力は途切れることなく、それぞれに美しい球体のオブジェに仕上がりました。
2012.4.(3) アトリエ講師 星野 由香