入園・入学・進級おめでとうございます。それぞれにみんなまたひとつ大きくなり、子ども達もアトリエも新たな一年がスタートします。本年度は、子ども達の言い方を借りれば、更に“進化”したアトリエになることと、和久共育の原点を忘れないアトリエを目標に、スタッフ一同、子ども達と共に理論と実践の両方から創造力を全開して取り組んでゆきたいと思います。
今、世界的に注目を浴びている幼児教育“レッジョエミリア”の教育理念に
子どもには 百とおりある。
子どもには 百のことば 百の手 百の考え 百の考え方 遊び方や話し方
百いつでも百の 聞き方 驚き方、愛し方 歌ったり、理解するのに 百の喜び
発見するのに 百の世界 発明するのに 百の世界 夢見るのに 百の世界がある。
子どもには 百のことばがある(それからもっともっともっと)
けれど九十九は奪われる。
学校や文化が 頭とからだをバラバラにする。
そして子どもにいう 手を使わずに考えなさい 頭を使わずにやりなさい
話さずに聞きなさい ふざけずに理解しなさい
愛したり驚いたりは 復活祭とクリスマスだけ。
そして子どもに言う 目の前にある世界を発見しなさい。
そして百のうち 九十九を奪ってしまう。
そして子どもにいう 遊びと仕事 現実と空想 科学と想像 空と大地
道理と夢は 一緒にはならない ものだと。
つまり 百なんかないという。子どもはいう でも、百はある。
という言葉があります。全くそのとおりです。
今、日本人がとびつく教育は知能を高める為や、学力向上の為に、頭と心と体をバラバラにして、私達よりはるかに感性が豊かで、想像力・創造力に溢れている子ども達から、色んな力を奪ってゆきます。私は勉強することにも、学力を高めることにも反対ではありません。むしろ賛成です。しかし、今の教育は、生きる力を身につけるという教育本来の目的が、手法である学力向上にすりかわってしまっている気がしてなりません。もし、その為に奪われるものの方が多いのだとすれば、たとえ勉強はできても本当に賢い子には育ちません。
そんなやり方をしなくても、賢い子は育ちます。子どもを勉強のできる子に育てることはできます。何人ものアトリエの子ども達がそれを証明してくれました。たとえ、勉強が苦手な子がいたとしても、生きる力と主体性をしっかり持った子に育ってくれています。勉強も大事、学力も大事、でも、何よりも大切なのは、心を育てることです。感性を育てることです。それはきれい事ではなく、感性と知性は同時に身についてゆくものだからです。感性の働きかけがあって、はじめて知性への問いかけがはじまります。子どもはロボットではありません。心が動いていないのに、暗記や訓練で知識を詰め込まれても、感性の扉も知性の扉も開かないのは当たり前です。
レッジョエミリアの幼児教育は、北イタリアの人口わずか14万人の地方都市で生まれ、1991年ニューズウィーク誌に「最も革新的な幼児教育」として紹介され、日本でも作品展が全国の美術館で行われ、多くの人に感銘を与えました。
作品展を見た教育者やアーティストは、“レッジョの子ども達の高度な表現力と独創的な思考力に目を見張った”とあり、“驚くべき学びの世界”と書かれていました。レッジョは街ぐるみの保育の現場で行われていることですから、アトリエの方が水準が高くて当たり前なのですが、アトリエの子達の作品は世界的に見てもすごいんだなあと、改めて思いました。
教育理論は、デューイやヴィコッツキー、ピアジェなどの著名な心理学者、教育学者の理論を発展させたもので、その根幹は、大人からの一方的なアプローチではなく、子どもを中心にすえた教育であるということは、和久共育の軸となっているフレーベルと同じです。紹介されている文面をそのままぬきとると、「レッジョエシリアの教育は、子どもと大人の双方が創造性を発揮し、美的で探究的な活動を通して、共に学び育つ関わりを形成することにあります。しかしそれは、狭義の芸術教育ではありません。ましてや大人の知識、技能を子ども達に教え込むことでもありません。子ども達は、身振り・手振り・言葉そしてアートを使って、自らの思考や感情を表現し伝達する独立した個人として育ちます。」とあります。
子どもの関心は日常生活の中から美的なもの(芸術性)へ、知的なもの(科学性)へと向かっていきます。「わくわく創造アトリエ」は日常生活の中で起こる様々な体験を軸に、美的創造活動と知的創造活動を融合させて表現するのが好きな子、考えることの好きな子を育てる為に生まれました。子ども達は自分で考え表現することにより、自発性を育て、自主性が生まれ、自立した個人として育ってゆきます。
レッジョが「世界最高水準の幼児教育である」とよばれるのであれば、WAKUBLOCKだけでなく、わくわく創造アトリエの活動はまさに世界最高水準であると言ってよいと確信しました。和久共育には更に数量的な法則と幾何学的秩序がその全てに内在しています。そしてほるぷ絵本館には世界最高水準の絵本と児童文学がそこへ加わります。
そう思うと、なんとしてでもこの教育を世に伝えてゆかなければならない、人口14万人の町から発信できたのですから、加古川でも発信することはできるはず。是非、加古川プレイルームのお母さん達も、我が子の受けている教育に確信と自信を持ってこの和久共育を子ども達の為に、広げてゆきましょう。
私達、講師もその自覚を持って、あえて自らのハードルをあげて、子ども達に負けないよう意識を高くもって学び続ける決意を新たにしています。
昨年は、忙しさを理由にできなかったお母さん達の講座も、今年は他の依頼が入る前に予定を組みましたので、来週お渡しするご案内をご覧になって下さい。また、毎年“コペルは楽しい!”と大評判であった積木と科学のコペルクラスも今年も開校します。こちらは、どうしても定員を決めないとできないカリキュラムなので今年は幼児6名、小学生8名で行いますので、お早目にお申込み下さい。(お申込み日が同時であった場合は、6回連続で参加される方を優先させて頂きますのでご了承下さい。)
それから、1才7ヶ月までの赤ちゃんとお母さんを対象とした0・1歳児特別講座も定員5名で、年間予定をたてておりますので、ご希望される方はお早目にお申込み下さい。
「子どもの目が輝く時」の冒頭にあるように、子どもは決して大人の従属物でも、大人になるための通過的な存在でもありません。たった一つしかない気高い個性を持つ、現在(いま)を充実させながら自らの力で育とうとする生命です。どんな時代になっても、このかけがえのない生命が思う存分生きることができるように、子どもの目の輝きを失わせないように、今、自分にできることをやり続けてゆかなければと思います。
2012.4.(1) アトリエ講師 星野 由香