7月3回目の活動は、直角二等辺三角形をテーマに造形絵画用の波板ダンボールの三角を30cm×30cmになるように、1・1/2・1/4 で構成し、凹の部分に絵具を塗って、黒か白を選んでローラーをかけて仕上げました。根気を要する活動でしたが、最後のローラーで作品の感じがガラっと変わり、まるでプロがつくったポップアートのような仕上がりに変化するので、その面白さがわかる小学生は「うわぁ~!」と自分の作品に感動している姿が多く見られました(^^)
今回、私が一番嬉しかった出来事は、細かい凹の部分を小筆で延々と塗ってゆく活動は、3年生以上のピカソクラスの子ども達も「これ、疲れる~....」と大変だったので、幼児コピカでは、「途中から大きな筆で塗ってもいいよ」と言ったのですが、年中さんのKくんは、最後まで小筆で色を変えて塗り続けました。小学生になると、例えば、縞々なら1本とばしに塗るというように、計画を立てて同じ色を使う場所は先に塗って、次の色も同じように塗るので合理的に塗れますが、まだ年中さんのKくんは1本1本色を変えるので、何倍もの労力がかかります。汗びっしょりになって手を絵具だらけにして最後までやり遂げたKくんに、見守っていた他のお母さん達も皆で拍手。Kくんの達成感に満ちた表情と、人より何かが出来たからでなく、ただただ、わが子の一生懸命な姿に心を打たれているお母さんの表情は、私の胸に深い感動を与えてくれました。
幼い子ども達に“最後まであきらめない”という感情が芽生える時、それは人に言われて湧き起こる感情ではなく、自らそこに向かった時に初めて自覚する感情ではないかと思います。はじめは好きだから、楽しいから、一生懸命やっていることも、いつしかそれに苦しみも伴うことを子ども達は知ってゆきます。疲れた、もう止めたい と思うくらい頑張ってやり遂げた時、ただ楽しかった、とは違う感情に出会います。その気持ちこそが、何よりものアトリエで育つ財産。その快感を知った子は、またその感動に出会うために頑張る人間になってゆくでしょう。
そんな体験をくり返し、自己肯定感をしっかり持った子は、やがては、自分の利にならなくとも、人の為にも世の中の為にも、諦めないで頑張ることもできる人間になってゆくと思います。無理矢理やらされても、やり遂げた感動を得ることはありますが、たいていの場合、私たちの経験も踏まえ“もう二度とやりたくない”と思いますよね。自らそこへ向かったことではないから、自己肯定感が芽生えないのだと思います。
ゆとり教育が失敗とされ、現代の風潮は“やはり子どもの頃から厳しい教育をしなければ”と、幼児教育もその方向へ向かいつつある中で、適切な環境を用意すれば子どもには自ら掴み取ってゆく能力があるということ、全幅の信頼を持って子ども達に接すれば自ら困難に立ち向かう力が芽生えること、現在の子どもの問題は、子どもが引き起こしているわけじゃない、私達、大人の問題であることを、幼い子ども達と接することを仕事にする人たちには、特に気付いてもらいたいことだと感じます。
今週から夏アトリエが始まります。先週は、今、流行っている手足口病をはじめ、今までにないくらいのお休みで、毎日電話がかかってきました。
とても楽しい活動が続きますので、くれぐれもお体には気をつけて下さいね。
2011.8.(1) アトリエ講師 星野 由香