以前にもお伝えしましたが、今年の8月、遊びの創造共育法全国大会が開催され、全国の創造共育を行っている園を中心に、児童館や美術館、老人介護施設、養護施設など総勢200名が集まり、どのような活動を行い、どう子どもが変わり、どう私自身が変わったのかの発表がありました。
その中で、多分いち早く創造共育を保育に取り入れ、また、一番、力を入れている山口県の共楽園保育園の発表は、活動の実践をDVDで見ながらの1時間半くらいのもので、1・2歳児から年長児に至るまで、感動的な創造活動を行なっていました。積木の活動は、実際に錦帯橋や、宮島などの名所を見に行きビデオに撮って、それを帰ってきて見ながらスケッチしたり話し合ったりして、どのようにつくってゆくのかを子ども達が決めるそうです。パンフレットや童具共育でも紹介されていますから、ご覧になった方も多いと思いますが、それは見事としか言いようがありません。完成度もさながら、何日もかけて皆で協力して、あれだけのものを作り上げた感動と自信は、子ども達の一生の財産となることでしょう。
その園の子ども達が、遠足で美術館へ行ったときのこと。たまたま同じ区域の小学生も来ていて、ある新聞社が、その小学生の様子を取材しに来ていたそうです。でも、この園の子ども達の作品の見方が他の子達とは違うことに関心をもった記者さんは、「どうしてここの園児さんは、真正面からだけでなく、上や下や後ろ色んな角度から作品を見ているのですか?なぜこんなに一生懸命見ているのですか?」と聞かれたそうです。先生もその時初めて気がついたそうですが、「多分、見てきたものを、園に帰ってから積木でつくるという遊びの習慣があるからではないか。だから自然と物をじっくり見る物の見方が身についたのではないか。」と話されていました。

それと本物を見る力が育っているのではないかと思います。アトリエの子も美術館へ連れていったら「思いの他、はまって見ていた。」というお話はお母さん達からよく聞きます。この園では、45基尺のWAKU積木だけでなく、30基尺の積木、くむくむ、おどろき、かずの木、ケルンモザイクと、全ての子が十分に遊べる量が揃っています。子ども達に一番、人気のあるのは、意外にも“おどろき”だそうです。
また、驚くべきことに共楽園保育園の園庭には遊具がありません。遊具をなくしてからのほうが、子ども達がよく外で遊ぶのだそうです。子育ても保育も覚悟だと思いました。園庭に遊具がないとなれば、その園の指針がわかっている人にはいいけれど、大抵の場合は、園を選ぶマイナス要素になると思います。でも、それが子ども達のためになると信じたら、そのリスクを背負ってもそうする覚悟。何かを本気でやっている方からは、同じことを学ばされます。

どこで創造共育を行っても聞こえてくる同じ言葉。「この子にこんな力があったなんて。」「この子がこんなに集中している姿を始めてみた。」そういう意味では、子どもも、大人も、誰でも、皆同じ。そして100人いれば100の答え。皆違って皆いい。そのことをあらためて思いながら、創造共育を広げてゆかなければならないと感じました。

先日アトリエのお母さんが主催した、ドキュメンタリー映画の中でこんな言葉がありました。「こどもは皆、能力をもって生まれてくる。それをそのまま育てればいい。もってない能力を外からつけて伸ばそうとするから子どもがつぶれる。」そのとおりだと思いました。また、ノーベル賞を受賞した赤崎教授は、「成否は別に考えておりませんでした。ただ、やりたいことをやってきた。」とインタビューで答えていました。では、どうすればいいのか、今回の和久先生の講演会では、これからのお母さん達が具体的にどう子ども関わってゆけば良いのかを、人間の本質的な成長のあり方と共にお話して頂きます。積木のワークショップはいっぱいになりましたが、講演会はあと数名参加して頂けます。少しでも行ってみようかなと思われる方は、今、和久先生の言葉が必要な方だと思うのでこの機会を逃さず、是非、参加して下さい。


2014.10.(1) アトリエ講師 星野 由香