1426742029.jpg
年生以上のピカソクラスの子ども達は本当におもしろいです。先週は、「アトリエの壁を森にしよう!」をテーマに一人一本ずつ自分の木を描いてもらいました。
一番初めの火曜クラスでは、「これから、60人描くからね。このクラスだけじゃないから。考えて描いてよ。」と説明。「わかっとう」の返事ではじまりましたが、いざ始まると、「わかってない!」遠慮してその大きさ!?木が初日から何本も生えてしまいました(笑)。そうだった、この子達はアトリエ育ちだった・・・・大きく描く子もあえて小さく描く子も、フリーハンドで堂々と描いている姿は、なんだかとても気持ちよさそうで、とてもかっこよくてとめられませんでした。

1426742019.jpg
彼らは先生の話を聞いていないのではなくて、後の子達のことを考えていないのでもなくて、アトリエを信じているんだと思います。アトリエならこのくらいのこと、なんとかするでしょという長年の体験からの信頼。それはまた自分への信頼でもあるのだと思います。実際、今回は畑先生がなんとかしましたので、是非2階の教室を見て下さい。
このアトリエには、日常にある当たり前の価値観ではなく、もっと突き抜けたものがあること、普通の感覚では理解できない通常の垣根を越えた価値観を子ども達はこの場所で感じているのだと思います。

体験参加の時、時々「このアトリエに通うとどんな子になるんですか?」と聞かれることがありますが、正直、その質問には有体にしかお答えしていませんでした。一人ひとり違いますから、答えようがないのです。でも、今、6年生の子達や、これまでの卒業生を見てきて長年の体験から、ひとつの答えをだせるとしたら、それは“自分をしっかりもっている子に育つ”ということです。
今、教育は、学力がなにより優先され、画一的であることが求められ、個性尊重と言いながら、個性は欠点としてなおされてしまうことが多いです。しかし、社会にでれば、“自分をしっかりもっている”人材であるのかどうか、人と違った何かをあなたは持っているのかを問われます。子ども時代の自由を奪われて、嫌々ながらやってきた勉強で身につけた学力が、“これからを生き抜く力となります”とは言いづらい時代はもうきていますよね。皆、本当はそのことに気付いていているけど、かと言って自信の持てる教育の核が見つからず、わかりやすい価値であり、すぐ結果のでる勉強を、より厳しく、より低年齢化することになってしまうのだと思います。

心配されるお母さんもいらっしゃると思うので、現実として伝えると、アトリエの5・6年生、卒業生は、皆じゃないけど、勉強のできる子は多いです。(出来なくてもいいので、そこは誤解しないで下さいね。)高学年になってから塾へ行く子はいますが、幼小期に勉強系の習い事には行っていない子が殆どです。皆、思いっきり遊んで育ってきました。なのにどうして、そういう子に育つのか。アトリエ活動で行なってきたことや考えるのが好きな子の育っているということもありますが、やはり家庭の環境、日常によるものも大きな要因だと思います。

加古川プレイルームの子ども達は、幼い頃から質の高い絵本の読み聞かせで育ち、和久洋三の積木、童具で遊んで育ってきています。“本物”が常に家庭の環境にありました。それは、大人が思っている以上に子ども達の育ちに大きな影響を与えていることを、ピカソクラスの子ども達を見ていて感じます。

先日、テレビで船大工9代目の職人が、日本の技術レベルの高さを伝えるためにつくった、全てが木製の自転車が紹介されていました。性能も驚くべきもので、お値段も216万円と高額ですが、世界中から注文が殺到し、3年先まで予約がうまっているそうです。その時の職人さんの言葉。「特許なんていらない。これは、他の職人にはつくれない。」すごい言葉だと思いました。和久の製品も同じ。アトリエの教育も同じ、特許は入りません。

アトリエの子は、世界最高水準の和久の積木で遊んできています。童具で遊んできています。しかもそれは技術力が高いだけでなく、徹底した基尺性と作家が生涯をかけて追及してきた幾何学、数量学、色彩学の秩序と哲学があります。そんな童具で遊んで育ってきた子は、算数や理科の理解は出来るであろうし、選りすぐりの絵本を読んでもらって、聞く力と読解力が育てば自然と国語力はつくであろうし、何より、学問する時に最も重要な力である思考力<想像力・創造力>が育っているのですから、本人がその気になれば、勉強はできて当たり前の環境に育っていると思います。ただ、そこはアトリエの子、本人がその気にならないとやらないという問題はありますが(笑)。でも、自分のやりたいことをやる為に必要な勉強ならば彼らは必ずやります。ですから、子どもが本当にやりたいことを見つけた時は、「それでは食べてゆけない。」と腰を折らずに、とにかくやらせてあげて下さい。徹底してやった時、それが他のことにもつながってゆきます。アトリエの子は、勉強ができなくても、変に何かをやらされてなければ、その力は育っています。

1426742012.jpg
先日のくむくむの活動も、子ども達の自由な発想、また科学的な発想に驚かされました。前回は、メリーゴーランドがつくれるように、中心だけ皆、同じようにつくっています。いろんな工夫が出来て、一箇所動かせば、他のところもまわる歯車をつくれたり、動くクリスマスツリーとして、かざったり遊びの幅はどんどん広がってゆきます。活動後に遊んだクムンダのレールにくむくむでパーツをつくって転がす遊びは、お母さん達の講座から生まれました。選んだパーツや組み合わせによっておもしろい動きをします。クムンダは大人でもはまりましたから、物理的なしくみを考えるようになる小学生にもお勧めです。

今、子どもの社会がどんどんおかしくなってきていることを感じない方はいないと思います。正常であることが変わっていると言われてしまう。出来れば幼児期までに、幼・小期は特に、家庭の環境を整えて、ゆるぎないしっかりとした土台をつくってゆかなければ、社会の波に流されてしまいます。戦うものがたくさんありますが、教育の核をしっかり持って、親が覚悟を決めたら、必ず子どもは自分で育ってゆきます。自分で育つ力を持っています。子どもの力を信じて、これからも見守ってゆきましょう。

2014.11.(2) アトリエ講師 星野 由香