2月の積み木の山脈をつくる活動の時のことです。金曜日の親子コピカは、出産で三人お休みされているのと、振り替えもあり、その日はRくんただ1人。もともとマイペースのRくん、こんなことはめったにないので今日はとことん彼のペースにあわせて、やりたいようにやらせてあげようと思いました。
はじめは、絵本“ぎょうれつぎょうれつ”の読み聞かせ。「もう1回読んで!」に応えてあげられるのも1人ならでは。その後は、16個の三角をつないだ積み木で見立て遊び。「なにが出来たの?」って聞くと「土砂くずれの大変なときに来るレスキュー車」(笑)。文章で返ってくるのは、さすがほるぷ絵本館育ち。その後つくったのが、除雪車で、お母さんから「今、除雪車にはまっていて。」と聞いたので、“はたらきもののじょせつしゃ けいてぃ”をもってきて一緒に読みました。世界で10本の指に入るであろうばーじにあ・りー・ばーとんは、私も大好きな作家の1人。(いたずらきかんしゃちゅうちゅうやちいさなおうちなどを描いた作家です)とくに“けいてぃ”は、どのページも細部にわたり絵を楽しめ、Rくんと30分くらいかけて読み込みました。彼の発見と感動からあふれでてくる想像の世界に大人達も惹きこまれてしまい、私は以前にも増して、“けいてぃ”が大好きになってしまいました。私にとってこれからの“けいてぃ”は、Rくんと共にある絵本になるなあと感じました。絵本の思い出が親子の思い出と共にあるのは幸せなことですね。思春期や結婚した時、自分が子育てをはじめる時、子ども達は絵本と共に、お母さんの声や肌のぬくもり、その時の情景を思い出すでしょう。同じ物に感動を共有した体験は、親子、家族の絆として、次世代へも受け継がれていきます。

それから、絵本の中に火事になる場面があったのと、Rくんの言葉に「土しゃくずれ」もあったので、積み木の山をつくってから、赤のモザイクをかざって山火事に見立てて、雨どいをホースにビーズのお水を放水して、消防車が火事を消すというごっこ遊びをしました。大人もとても楽しい遊びでした。ゆったりとした時間の中で、Rくんと心がつながってゆくのを感じた一時間半でした。Rはこのままでいい、ずっとこのまま育って欲しいと思いました。

前回、“つなぐ”に体験記を書いてくださった山田あゆみ・しおりちゃんのお母さん、お父さんもわが子のそのままを受け入れて子育てをされてきました。絵本・童具・アトリエとの出会いから、少しずつ“ほるぷ子ども図書館”“童具”を長年にわたり揃えられて、子育ての環境を整えて下さいました。あゆみの読書力は、読書が趣味というより呼吸に近いくらいの私もたちうちできないくらいです。妹のしおりも毎日、童具にさわっていますから、図形のエキスパート。奇想天外な発想力を持っています。はるかに私を超えていますから、想像つきませんがどんな女性に育ってゆくのかとても楽しみです。

どうしたらそんな子が育つのか、それは、本当に難しいことでなく、子どものそのままを受け入れ、子どもが育ってゆく本物の環境をしっかり整える、本当にそれだけでいいんだと、10年にわたる山田さんの子育てを見ていてそう思いました。体験記にもありましたが、決して安くはないクムンダを買ってくださった時も、あゆみとしおりは、クムンダのレールを輪にして、フライパンに見立て積み木やモザイクを放りこんで遊んでいました。それでもそれを「これは、そんな風にして遊ぶんじゃないのよ。」と言ったりせず、笑ってみていられる。そんなわが子の発想力を楽しむ。そうしているうちに数ヶ月後、お部屋いっぱいにレールをつなげて遊んでいる写真を見せてもらいまいた。子どもは、環境さえあればちゃんと自分で答えをみつけだします。何度もお伝えすることですが、子どもにはその力があります。小学校に入学するにあたり、まず、勉強のことが心配になると方もいらっしゃると思いますが、知識偏重型から思考力重視に変わってゆくこの時代、勉強一辺倒になってしまうこともまた、落とし穴となる感じもします。子ども達の生きる力を信じて、これからもどう育てたいのかよりも、子ども達がどう生きてゆこうとしているのかを見守ってゆきましょう。

2015.3.(1)アトリエ講師 星野 由香