驚きと感動の日々 “好き”の力を信じましょう。
前回の幼小コピカの絵画は、“一体、ここで何がおこっているの?”というくらいの驚きと感動でした。“タケノコ”というモチーフが季節にあっていたからなのか、始めに読んだ絵本“ふしぎなたけのこ”のお話しのように、ぐんぐん天まで伸びてゆく竹の子が自分の姿に重なったのか、4月の新鮮な気持ちが反映されたのか、作品のすごさももちろんなのですが、イーゼルにむかう子ども達の姿が違っていました。見ているだけで心が昇華されてゆくような子ども達の目の輝き。一人ひとり違う表現、画面にすいこまれていきそうなくらいの集中力、それでいい絵がうまれないわけがありません。とりわけ、一生、目にやきつく姿を見せてくれたのは、今年、入会しアトリエで初めて絵を描いた年中さんのYちゃん。お姉ちゃんが通っているので、場所にも先生にも慣れていますが、4月の1回目と2回目は、途中で何度かお母さんのところへ行ってしまいました。なので、じっとしている絵画でどんな感じになるのだろうと思っていましたが、Yちゃんは、1時間半、気もそれることなく自分の絵と向き合っていました。絵画ですから、楽しくて楽しくて仕方ないっていう感じじゃなく、集中して自ら物事に向かっている、その感覚の目覚めを感じているようでした。かと言ってこれからもずっと同じようになるかと言えばそうでなく、また、途中でお母さんのところへ行ってしまうかもしれません。子どもはそんなに甘くない(笑)。一人の人間が、かけがえのない個を持つたったひとつの生命がそだってゆくのですから。大人の思い通りに育つ魔法なんてありませんよね。また、子どもを思いどおりにしていいわけがない。どうか他の子と比べることなく、平均に近づけようとすることなく、将来のことを案じすぎず、一度しかない子ども時代を親も子も共に生きましょう。
あるテレビ番組で東大生にインタビューをしていて、悩みごと第一位は、「恋人ができない」で2位は、「将来への不安」でした。これって、東大生じゃなくても、同じ年代の子たちの共通項ですよね。「やりたいことがある人、夢のある人がうらやましい。」と言っていました。これも東大生じゃなくともそう思います。自分のやりたいことを一生懸命やっている人や、夢に向かって目をキラキラさせて生きている人に私たちが輝きを感じるのは、そう生きたいと人が願うからなのだと思います。
水木しげるさんの言葉、「自分の好きなことをやる。そのために人は生まれてきたのだ。」前後があるので、それだけじゃダメというのもあるんですけど、まずは、子ども達の好きの力を信じましょう。そして、応援しましょう。“好きの力”は決してあなどれないということを、必ず、子ども達が気づかせてくれます。
2016年5月(1) アトリエ講師 星野由香