6月は毎年、蛍を見にいくのですが、今年は、アトリエのお母さんとおじいちゃん(おじいちゃんと呼ぶにはお若いのですが。)のご厚意で、とても素敵な場所に案内してもらいました。スポットになっているところではないので、誰も見に来ている人はおらず、真っ暗な中、日本の原風景と満天の星空のもと星の光と蛍の光と水に反射した光が、一体となっている幻想的な世界に心がとても静かになりました。車でわずか1時間走ったところでそんな風景が見られるなんて、日本の自然は素晴らしいですね。


私の家の裏には、ため池を囲んだ小さな森があり、幼い頃は毎日のように遊んでいました。10人から20人くらいの異年齢の子ども集団で、秘密基地をつくったり、弓矢をつくったり、粘土になる赤土を探したり、ザリガニや、オタマジャクシをとったり。色んな遊びも、ため池の怖さも、被れる植物や食べられる実なども、大きい子達から教えてもらいました。だから、小学校に入り、その森に子どもだけで入ってはいけないと朝礼で聞いた時はびっくりしました。私にとっては庭のようなものでしたし、地元の子は幼稚園の子もおにいちゃんおねえちゃんと一緒に、ずっと子どもだけで遊んでいましたから。今考えると怖いですが、子どもが多かった時代は、そこに大人の介入がないのが普通でした。だからこそ、危険に対しても自分で判断する能力が身についていたのだと思います。

去年その森でセミの声を聴いたのは、7月12日。今年もその時期あたりから、セミの羽化が始まります。子どもの頃、どうしてそこに興味を持たなかったのか不思議なのですが、私がセミの羽化をみたのは、大人になってから。アトリエを開校して用水路をはさんだお隣さんの庭で、小学生の子ども達と一緒に初めて見ました。その時にフラッシュをたいて写真を撮ったら、虫好きの子から「セミがびっくりするやろ!光で羽が乾いたらどうするねん!」と怒られたのを今も思いだします。いくみくんという今では考えられないくらいのやんちゃ男子で、用水路にハダシでばしゃばしゃ入ってゆくような強者でした。ある日珍しく靴を履いて、用水路に入ってるなあ思ったら、彼が履いていたのは、私のおろしたてのビリケンストックでした(笑)。ほんと、アトリエには色んな子がいました。そして今も伝説を残す子ども達でいっぱいです。

今年は夜か明け方にその森に入ってセミの羽化を見てみようと思っています。3年生以上の子達に人気の児童文学、“シノダ”に描いてあるセミの幼虫釣りもやってみたい!子どもと接する仕事をしているおかげで大人になってからも世界が限りなく広がってゆきます。子ども達に感謝ですね。これから子ども達が輝く季節“夏”がやってきます。会う度に真っ黒に日焼けして、逞しくなってゆく子ども達の姿が楽しみです。

2017年7月②アトリエ講師 星野由香