積み木の世界
先週、園での積み木指導で 「今日は、何、つくりたい?」と4歳児さん達に聞くと、「積み木の世界をつくりたい!!」(笑)という答えが返ってきて、意味はなさないのだけれど、子ども達の声として聞く“積み木の世界”という言葉がとても心地よく感じました。
ゴールデンウィークに積み木イベントを行い、園へ積み木指導へ行き、アトリエも積み木カリキュラムで、積み木積み木の毎日。まさに私は、かれこれ20年程、積み木の世界にいますが、未だに驚きと感動、発見が尽きません。もちろんそれを与えてくれているのは、WAKUBLOCKと子ども達です。
たくさんの子ども達が積み木で遊ぶ姿から、子ども達が最も遊ぶボールと同じように、積み木にも子どもが求める普遍の世界があることを実感してきました。
最も単純な秩序を持つ形である球(ボール)は、最も子ども達(人間)の世界で受け入れられている形体です。球をつかった、遊び、ゲーム、スポーツをあげればきりがありません。単純な秩序であるからこそ自由の多様性があります。積み木も色んな形があるよりも、単純な秩序である立方体・直方体・角柱(四角柱)がたくさんある方が子ども達は良く遊びます。
積み木遊びは、積む・・か並べる・・か、そのどちらかです。だからこそ重さや形はもちろん、素材や精度などのひとつ一つのことが、積み木遊びの中では重要な要素となるのです。そして、最も重要なのは、着尺です。これは着尺が整えられている積み木に触れてきた人にしかわからないかもしれないのですが、あいまいな着尺の積み木では、当然なのですが積み木遊びそのものもあいまいになってしまいます。とことん遊びこむことが出来ません。
WAKUBLOCKをはじめ、お子さんが小さい頃から童具を使ってきたアトリエの方は、全ての着尺がピッタリとあうことに慣れているので、他の積み木をつかった時にその違いがよくわかると思います。着尺を意識してつくっている積み木はもちろん他にもありますが、徹底して着尺を追究し、積み木の考案者であるフレーベルに基づき、各形体の個数にまで、あいまいにせずにつくられている白木の積み木セットは、私が知っている中では、今のところWAKUBLOCKしかありません。WAKUBLOCKには、徹底した数量的法則と幾何学的法則が内在しています。
WAKUBLOCKは必ず着尺があうのだ、という信頼があるからこそ子ども達は、どうしたらこんな風に積めるんだろう、どうしたらこれがつくれるのだろう、と考えます。そもそもあわないのだったら考えることはしなくなってしまいます。
秩序というと自由と正反対の言葉で自由を制約してしまうという感じがしますが、実は、人間の表現活動は、秩序によって自由が保障されています。たとえば折り紙、これは正方形という秩序があるからこ
そあれだけの表現ができます。もっと自由に!と1辺を違う長さにしたら、これまで出来ていた表現の殆どができなくなってしまいます。ボールも正確な球でなければあらゆるスポーツやゲームが成立しなくなります。あやとりも“輪にする”と言う秩序があるからこそ、表現が無限に広がってゆきます。言葉には文法という秩序があり、音楽には音階があり、積み木には着尺という秩序があります。人間はあらゆるものごとに秩序を読み取ってきました。秩序と自由は矛盾することなく同時に存在しています。
童具館の積み木の世界は小宇宙のようです。人間の思考のあり方が、そのまま形になっています。積み木の品質ももちろんですが、幼い時から、本物の仕事に触れて育つことで身につくことは、決して少なくないと思います。その逆もしかり。是非、ご家庭で遊び環境を整えるためにも、基本の積み木と出来れば平面の世界のケルンモザイクを揃えてあげてください。
2019年5月②アトリエ講師 星野由香