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10月、11月は季節柄、園の絵画指導の依頼をよく受けるのですが、どこの子ども達もどんな子ども達も子どもは本当にすごいとつくづく思います。そういう体験を積み重ねることは、私にとってもアトリエ講師にとっても大事なことで、色んな場でそういう子ども達の姿に出会うと、“子どもの力”に確信が持てるようになります。子どもの力をより信じられるようになります。だからこそ、子どもが絵を描いている時に何も言えません。子どもの感性よりも私の判断のほうが正しいとはとても思えないからです。私の一言のせいで子どもの絵が変わってしまうこともありました。あの時、あの一言をいわなければ・・・どれほど後悔したかわかりません。子ども達が絵を描く姿は人生の縮図を見ているようです。子どもがどんな能力を秘めているのか、どんな人生を歩んでゆくのか、本当のところは誰にもわかりません。だからやはり信じて待つしかないのだと思います。

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自分の体験にしても、アトリエで育っていくたくさんの子ども達やお母さん達を見ていても、子どもを信じているからこそ、信じたように子どもが育っていくのではないかとこの頃思います。私がよく、「大丈夫ですよ、このままで」って言うのは何も根拠がなくて言っているわけではなくて、本当に大丈夫だった事例をたくさん見てきて、確信しているから言えるんです。でも当たり前なのですが、お母さんがぶれてしまって、教育方針を変えてしまったら、それは大丈夫だとは言えなくなります。

物事は全てつながりと関係性がありますから、子どもが本来持っている力と子どもを信じる大人の気持ちの相互作用が、彼らの潜在能力をひきだしているのかもしれません。そういうこともこの頃、科学で証明されつつありますよね。だったら親ができる子ども達への最大の応援は信じることではないかと思います。それは、いつかこの子は立派な人になる、と信じることではなくて、この子はこのままで大丈夫、と信じるという意味です。信じるということもまた愛情ではないかと思います。禅問答みたいですが(笑)。

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先週は球をテーマに石こうで半球のオブジェをつくりました。カプセル球に粘土で円柱型をつくって貼り付け、そこに石こうを流し込み、その上にスチロールの半球をのせて、レンガでおもしをして待つこと20分であの形が出来ました。試作を見せて藤本先生が「これ、何でできていると思う?」って聞いたら「石こう」って答える子ども達。「石こう」という言葉を口にしている幼児は、日本全国探してもアトリエの子達だけだろうなあと思いました(笑)。石こうが固まる間はいろんなボールをトレイに集めて転がして遊んでいたのですが、先生が、「みんなでせーのっ、で転がすよー!せーのっ!」って言ったとき、2年生のK君が焦って、4歳の女の子が集めていたボールのトレイを、パッともっていって転がしてしまいました。「K、今この子のとったで。とったらあかんやろ」って言ったら、K君はしまったという顔で、「知らんかった。ごめん。ごめんなごめんな」と何回もあやまって、新しいトレイにボールを集めてあげていました。

そこまで見てくれていたら、K君がわざととったわけでないことも、Kの優しい気持ちもわかるのだけれど、もし最初の場面だけを見て「人のとったらあかんやろ」と怒って、「知らんかった」とKが言った時、「いいわけするな!」となってしまっていたら、K君の本当の姿は見ることができません。K君は性格上、色んなところでそういうことがあるだろうなあと思いました。今は誤解されても謝るだろうし、怒られたら悲しい思いもするだろうけれど、これがずっと続いて高学年になったら、「もうえーわ!どうせ俺なんか」になってしまうかもしれません。全力で彼のことを信じる大人の存在が必要だと思いました。どの子にもそういう大人の存在は必要だと思います。それは、私が子どもと関わる仕事を選んだ時、最も大切にしたい心情でもあります。

アトリエが終わった後に、Kくんが「かわいいかわいい」って赤ちゃんを見ていたので(本当に可愛すぎる赤ちゃんなのです)、帰る時に「いま赤ちゃん見て、かわいい~って思ったやろ?それと同じように、先生たちはKくんがかわいいねんで」って言ったら、後ろを向いたまま「本間に?」って言ってました。子どもの心の本当のところがわかりませんけれど、時には口に出して愛情を伝えてあげることも大事だと思いました。
お母さん達の愛情はもちろん、子どもに伝わっていると思いますが、時々、「お母さんは○○が大好き」と言葉に出して伝えてあげると子ども達は安心するかもしれません。


来週は29日にかずの木研修、31日に和久先生のリモート講座があります。
是非、お申込みがまだの方は、お早目にスタッフにお伝えください。
ミーティングID、パスワードはLINEにて後日お伝え致します。


2020年10月③アトリエ講師 星野由香